皆さんは「電王戦」という将棋の試合をご存知でしょうか?
プロ棋士とコンピューター将棋ソフトが試合をする大会で、世界中から注目を浴びている大会でもあります。
今回はその電王戦で現役プロ棋士から初勝利した最強将棋ソフトと呼ばれている「Ponanza」の開発者
『山本 一成』さんから仕事術を学びます!
山本 一成(やまもと いっせい)
1985年生まれ、元々将棋が好きだった山本さんは東京大学在学中も、将棋部に所属しアマチュア5段の棋力を持つ実力者でした。
在学中、苦手意識を持っていたコンピューターを、得意な将棋と組み合わせて克服しようと取り組んだのが将棋ソフト開発のきっかけだったそうです。
将棋の腕に自信があった為、強い将棋ソフトができると思い、初めて作った将棋ソフトがとんでもなく弱かった事から「計算が得意なはずのコンピューターがどうしてここまで弱くなるのか」という疑問を抱き、ソフト開発にのめり込んでいきます。
AI技術の抱える問題
なぜ弱い将棋ソフトができてしまったのか?
それは人間自身が自分の考えをプログラムに落とし込めていない事が原因だと山本さんは考えます。
我々は普段、自然に話し、歩き、走っています。
ですがそれをどのように行っているかを言葉だけで説明することはできません。
「人間がもともと知っている事は言葉にできない」という前提を作ることでソフト開発が前に進み出しました。
そこで「将棋で機械学習」を行い、プロの指し手を真似し、プロの棋譜を覚えさせる事でソフトのレベルが格段に上がったそうです。
ポイントとなったのは棋譜を丸暗記させるのではなく、その棋譜の中で大事な局面の要素を抽出して覚えさせた事。丸暗記だと同じ状況にならないと良い手が打てませんが、要所ごとに覚えさせる事、汎用性を高め全体的な棋力向上へと繋げたのです。
こういうソフトを開発できる人って考え方がすごい。
失敗してもそこからヒントを見つける事が重要なんですね。
今後の展開
育て上げたPonanzaで現役プロ棋士を敗るという快挙を成し遂げた山本さん。
AI技術がどんどん進化していく中で、今後の人間とコンピューターの付き合い方をこう語ります。
「コンピューターは教えたことは完璧にこなすけど、逆に言うと教えたことしか出来ません。
人間社会にはルールがあり、それを伝えているつもりでも例外がたくさんあり、それを人間側が網羅出来ていない事で、コンピューターがその例外に躓いてしまうと抜け出せなくなります。
それを上手くサポートしてケアしてあげる事が大事なんです。
必要な事をしっかり教えてあげる事で人間の負担を減らす、分からない部分はまた教えてあげる。
お互いがサポートし合う事で、新しい社会システムを作っていけるはずです。」
これから先、コンピューターに仕事を奪われるという不安を感じている人も多いと思いますが、コンピューターに負けないよう人間が知識や技術を磨いていくことで、お互いが切磋琢磨し社会が良くなっていくのではないでしょうか。
人間同士だけではなく、コンピューターともしっかりとコミュニケーションを取る事で社会人としても上のレベルに上がれるのだと思います。