「人類史上、最も深く考える人」と呼ばれる将棋棋士・羽生善治さん。
1996年の7冠達成から今でも将棋界の第一人者として、複数のタイトルを保持し続けているただ一人の棋士。
今回はそんな羽生善治さんから仕事に対する術を学びたいと思います!
安全、確実な道を選ぶと勝ち続けることは難しくなる
「大一番の対局では誰しも手堅く、安全確実な道を選びたくなるものだ。自分もそうすることがよくある。しかし確実にという気持ちに逃げると、勝負に勝ち続けるのは難しくなってしまう。」
「失敗できない」というプレッシャーのかかる仕事をする場面もあることでしょう。
そういった時には
リスクの低い道を選びがちになってしまうと思います。
しかしそれでは、
その場では失敗しないかもしれませんが、その思考が身に付いてしまうと、次に同じような状況になった際に成功できるかどうかは分かりません。
羽生さんの著書「決断力」の中に
「積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にする」という言葉があります。
目先の1勝にこだわってリスクを避け、穏当な手ばかり指すことは決して上策ではなく、さらなるステップアップのためには、リスクを負うことが必要だという意味です。
ここで言う
穏当な手とは現状維持の事であり、それでは成長できないどころか、
時代の変化についていけず下降するのみ。
1つの成功にあぐらをかいてしまった時点で凋落は始っています。
安全を選ぶだけでなく、
時には大胆にリスクを冒してでも挑戦していく姿勢が、成功を続けていくために必要な事となります。
勝負で大切なこと
羽生さんは勝負において大切な事を3つに分けて話しています。
1つ目は
『恐れない事』。
経験を積むと、いろいろなことが見えてきて、実際には目に見えないものにおびえてしまい、思い切って踏み込めないことがあります。
いつもなら簡単にできることでも、恐れを持ってしまったために自信や決断が鈍って、うまくできないのです。
自分にとって
必要でないものを見極め、決断しながら不要のものを捨てていくことが、恐れないことにつながります。
2つ目は
『客観的な視点を持つこと』。
局面を自分の側、相手の側からではなく、審判の様に中立的に見ること。
そうすると、「これはファールだ」「これは誤審だ」「こちらに非がある」といった正しいジャッジができます。
言葉を変えると「他人事のように見る」ということです。
視野を広く持ち、常に自分の選択が客観的に見て間違っていないかを意識しましょう。
そして3つ目は
『大局観では「終わりの局面」をイメージする』
一局の終わりの場面をイメージするとき、羽生さんはよく大局観をイメージするそうです。
大局観とは「終わりの局面がこうなってくれていたらいいな」「こうなるのではないか」という仮定を作って、そこにつじつまを合わせていくこと。
まず成功のイメージがなければいい結果は生まれません。楽観的に、というワケではありませんがまず、成功を意識することからはじめましょう。
最後の判断は自分で行う
さまざまな戦型が次々と試され、同じ棋士でも戦い方のスタイルがどんどん変わっている今の将棋界。
そんな中で勝ち続けるためには、情報の収集と分析が欠かせません。
だが羽生さんは「情報とのつきあい方に気をつけないと、情報がかえって勝負の邪魔をすることが少なくない」と言います。
今の将棋では、ある新しい戦型を1カ月間かけて勉強し、自分のものにしたのにそのときにはすでに時代遅れのものになってしまっていることがあるそうです。
ところが、
「せっかくこんなに情報を仕入れて勉強したのに」という思いが強いと容易に捨てられず、判断の遅れにつながることがあるのだとか。
情報はもちろん有益なものです。情報量が多いにこしたことはありません。
しかし、情報収集をしすぎたり、対策を練りすぎたりすることが
かえって時代に取り残されてしまうこともあります。
「捨てるべきときには、過去の蓄積を惜しまずに捨てる」という覚悟を持ち、自らの意志で残すべきもの、捨てるべきものを判断しましょう。
羽生さんは、将棋について一貫して「勝ちたい」というよりも
「道を究めたい」「道を究めることで、自分を高めたい」という思いのほうが強く、それこそが
人生の中で最大の価値だと言っています。
こういった「思い」が大切なのは、棋士に関わらず私たちにも当てはまること。
羽生さんが将棋を知らない方からも、広く知られている理由なのではないでしょうか。