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特集> 社長対談 > 社長対談「studio-L代表 山崎亮」
インライフの社長が聴き手となり、関西で活躍する社長と対談。社長業について、自身が身を置く業界について、同じ職種に就くふたりだからこそできる本音トークで、関西ビジネスのリアルな現状を浮き彫りに!

studio-L代表 山崎亮 studio-L代表 山崎 亮 さん
studio-L代表 山崎亮 1973年愛知県生まれ。コミュニティデザイナー。京都造形芸術大学教授(空間演出デザイン学科長)。

大阪府立大学農学部にて、ランドスケープデザインを学び始め、メルボルン工科大学環境デザイン学部へ留学。大阪府立大学大学院修了後、SEN環境計画室に6年間勤務。2005年、『studio-L』を設立。

主な仕事に、兵庫県立有馬富士公園運営計画、ユニセフパークプロジェクト、いえしま地域まちづくり、海士町総合振興計画、土祭(ひじさい)コミュニティデザイン、マルヤガーデンズコミュニティデザインなどがある。現在は55件のプロジェクトを進行中。

著書は『コミュニティデザイン(学芸出版社)』、編著書に『ランドスケープデザインの歴史(学芸出版社)』、共著書に『震災のためにデザインは何が可能か(NTT出版)』、『マゾヒスティック・ランドスケープ(学芸出版社)』、『撤退の農村計画(学芸出版社)』、『都市環境デザインの仕事(学芸出版社)』など。

studio-L
(有)インライフ 代表取締役 山田昌也
1965年生まれ。埼玉県出身。

大学中退後、観光専門学校を卒業し旅行系編集プロダクションに入社。2年間の勤務の後、大手出版社とフリー契約。
27歳の時、広告出版会社の広告営業部に入社。8年間の勤務後の35歳、広告代理店・デザイン会社を設立。
その後、2005年1月、『(有)インライフ』を設立。

インライフWEBの運営のほか、大阪で美をテーマにしたフリーペーパー「Beauty LIFE」を発行、西心斎橋の飲食店『アルカード』などの店舗プロデュースも行う。
インライフ 代表取締役 山田昌也

楽しくてその地域が最も必要としている良質な人とのつながり(=コミュニティ)を築く(デザインする)ことで、日本人が抱えている様々な困ったことを解決したいと、文字通り日本全国を奔走中の山崎 亮氏。偉大な功績を次々と残し、活躍の場もどんどん広がっていく氏にとってのビジネス感とは?
studio-L代表 山崎亮
studio-L代表 山崎亮
studio-L代表 山崎亮
studio-L代表 山崎亮
studio-L代表 山崎亮

山田:元々はランドスケープデザイナーとして活動されていたんですよね?

山崎:はい。大学院を卒業した後勤めた設計事務所では、公園の設計をやっていました。ただ、公園っていろんな人が使うので、単にデザインするだけじゃなく、みんなの意見を聞きながらデザインしていって、さらにその人たちが、完成した公園で活動してもらえるように関係性を作っていくということまで仕事にしていたんです。だから僕は、建築の設計か、公園の設計か、それとも人の話を聞いて公園を作った後のマネージメントをする仕事か、どれに興味があるんだろうと思いながら仕事をしていました。

山田:で、マネージメントの仕事に一番興味があると?

山崎:はい。でも最初は一番興味のない仕事でしたね。マネージメントとか、コミュニティとか、ワークショップとか、胡散臭いなあと思っていました(笑)。でもやっているうちに、そこをやらないと、本当の意味で気持ちが楽になっていく人って増えないんじゃないかなという気がしてきたんです。「働く」という言葉は、「“はた”にいる人を“らく”にする」という言葉から来ていると言われますけれども、ちょうどその時考えていたのが、鬱の人が100万人、自殺者が3万人いると言われているこの国の現状について。どう考えても正常な国の形には思えない。他にも、孤独死とかいじめの問題とか…そういう困っている人たちが、おしゃれな建築のデザインをしたからといって、ぱっと解決されるようには思えなくなってきたんです。そうじゃない仕事を生み出して、困っている人たちがちょっと楽になれる、そういうことをやる方がいいなと。

山田:それがコミュニティデザインの仕事ですね。

山崎:人と人が結びついていくコミュニティを作って、友達になっていって、なんか楽しいよねと思える関係を築く。職場の人間とも違うし、家族とも違う、 例えば、フィギュアが好きな人たちで集まれば、どこから来ているのか、どんな問題を抱えているのかも、とりあえずは抜きにして、フィギュアの話で盛り上がれる。で、ちょっと深く飲みに行ったりすると、「実は今の仕事がすっげえ辛いんだよね」っていう話が出てきたりとか。そういう話が気楽にできる仲間が街にいっぱいできるといいなという気がしたんです。

山田:起業は最初から考えてらっしゃったんですか?

山崎:考えてなかったですね。6年勤めていたうちの5年は何も考えてなかったです。

山田:スタッフを10名以上増やさないようにされているとか?

山崎:起業するとき、最初に働き方を考えないといけないと思ったんですよね。僕らの仕事って、まさに困っている人を助けるとか、その人たちに感謝されるとかいうことを全部報酬として脳が受け取らないと、やってられない仕事でもあるんですよ。収入が下がる年があっても、「お米が送られてきました」「ありがとうって言われました」「今まで知り合えなかった友達がいっぱいできました」「できなかった技術が手に入りました」「勉強になりました」とかいうことを全部複合的にその人の報酬だと受け取って、結果自分は全体的に儲かっているという考え方に賛同できるんだったら、一緒にやっていけるねっていうようなことです。ただ、今言ったようなことは、規模が大きくなるとなかなか難しいと思うんですよ。「給料は低いけれども学びだと思いましょう」とかね、ある種宗教みたいな感じになっちゃうようなことを理解する人たちはそんなに多くない。これが楽しくて仕方ないっていう人たちが10人集まってやる、サークルに毛が生えたようなものだからできるんだろうと思います。

山田:スタッフの方の給料は、年俸制なんですか?

山崎:はい。やったらやっただけ持っていきなさいというシステムです。例えば500万円の委託があって、会社に何割か残して、あとはプロジェクトチームを組んで、外注費とか宿泊費とかの経費をひいて、どれだけ残すかが自分の持ち分です。

山田:今は全国で活動されていますよね? 関わられたプロジェクトをひと通りみさせていただいて、正直何故ビジネスとして成り立ったのかが疑問でした。

山崎:僕も最初は、成り立つのかどうかは分からなかったんです。基本的には設計の仕事で食べていきながら、プラスαのところで自分のやりたいことをやれたらという感じでしたね。初めて関わった「いえしま地域まちづくり」プロジェクトも、お金が出るとは全然思っていませんでした。ただ、地域の人たちが困っていることを自分たちの手で解決したいと。例えば、それぞれの家が週1回、曜日を決めて家の前でごはんを食べるっていうことをみんなでやったとする。だんだん仲間が集まってきて、そしたら夜暗くなっても、毎日誰かがそこにいる安全な通りになる。見回りをするとかいうと、義務みたいになって大変じゃないですか。でも、楽しんでやっていることが結果的に見回りになっていたということであれば続けられる。そういうのをいくつか組み合わせていくうちに、みんなから感謝されるようになって。こっちは楽しんでやっているだけなんですけどね。地域の人たちが楽しんでできるコミュニティを作って、自分たちも楽しんでいたら、結果的にそれが島の問題を解決していたんです。

山田:なるほど。最初は無償で活動されていたんですね。

山崎:そうなんです。 そしたら、行政が注目し始めたんです。で、予算をつけるからこんな課題に取り組んでもらえませんかっていう話になってきて。といっても、1日行くと8,000円もらえるくらいでしたね(笑)。交通費と食事代をのぞけば、2,500円残るくらい。とても仕事にはならない。でも、僕らも楽しみで行かせてもらって、おいしい魚を食べさせてもらって、何故か懐には2,500円残っている。土日の遊びとしては悪くないかなというくらいのつもりでした。それがだんだん噂になってきて、うちもやって欲しいと言われるようになり、数千円だったのが、数十万円になって、数百万円になって、数千万円の仕事みたいになってきたんです。ただ、ビジネスで成り立つかどうか、つまり狭い意味での金が儲かるかどうかというのは、今もよく分かっていません(笑)。ただ、先ほどお話した、対話するとか、誰かと友達になるとか、ワークショップをやるとか、そういうことができるようになって、めちゃめちゃ自分のスキルとしては儲かっていますし、友達がたくさん増えたという意味でも、いろんな体験ができたという意味でも、総合的に儲かっています。それをビジネスと呼べるかどうかはわからないのですが、日常が今は充実しているというか、楽しいですね。
studio-L代表 山崎亮
studio-L代表 山崎亮
studio-L代表 山崎亮
studio-L代表 山崎亮
山田:島にコミュニティを作るというのはイメージできるんですが、都心って子どもも大人も忙しいじゃないですか。そういう時間を探すことは可能だったんでしょうか。

山崎:島や中山間などの場合は、地域に住んでいる人たちが地域のためにやるという支援型のコミュニティですが、都心の場合はテーマ型のコミュニティが多いですね。鉄道が好きだとか、乳がんについて問題意識を持っているとか、漫画が好きという人もいますし、料理とか、エコなライフスタイルとか、ファッションとか…。それぞれの興味ごとに人が集まっていますので、例えば、その人たちが御堂筋に100団体集まってきて、ずらーっと並んで、自分たちが楽しいことを提供するというのをやった場合、急に御堂筋が楽しい場所に変わる。自分たちの活動を持ち寄ってきて、楽しんで広めることで、何か街の課題が一個ずつ解決していくということにつながればいいなと思ってやっています。

山田:先ほどの鬱の話にしても、確かに僕の周りも、20代、30代で鬱や引きこもりの人がすごく多いんですよ。でも、引きこもりの人を無理やり引っ張ってもダメじゃないですか。ていねいに手紙を出したり、趣味の話をして心を開いたりしてあげないと無理ですよね。

山崎:そう思いますね。趣味などのテーマを共通項とするコミュニティが街にいっぱいあると、どれかに引っかかって、家の扉を開けて外に出て来ようと思う人がいるんだろうなと思うんですが。

山田:出て来ないともったいないですよね。これから団塊世代が引退されていくじゃないですか。

山崎:いよいよ活躍しなければいけないのに、何を閉じこもっているんだ、君たちは!っていうね(笑)。そうなんですよ。もったいないですよね、このままでは。

山田:と言って、外に出ている20代も元気がない。何でこんなに元気ないのかなっていうくらい。

山崎:ひとつは熱くなるための正当な理由を見つけられていないような気がします。対象が多様化され過ぎて、どこで熱くなればいいのかよく分からない状態が、今の世の中にはいっぱいある。そこにだったら熱くなっても恥ずかしくないんだよっていう場が設定されたら、実は今の20代だろうが、10代だろうが、ものすごく熱くなれるんだと思うんです。 それは、この前起きた3.11なんかを見ていると思いますね。東北で地震が起きて、それを何とかしなきゃっていう人に対して、「お前熱くなってんじゃねえよ」っていう人はいない状態ですよね。はからずも、熱くなってもいい正当な理由になっちゃったんですよ。今は、あれほどの熱くなるべき理由がみんな見つからないんだと思うんです。僕らがやる仕事のひとつは、まちに「熱くなってもいい理由」を作ることですね。

山田:山崎さんは、コミュニティデザインという分野に関してはパイオニアなんですよね。

山崎:なっちゃったみたいですね。でもパイオニアって、新しい所に先駆けて入ってきて、ほかの人たちが後から着いてくるというイメージがありますけど、後からついてこないかもしれませんね。変わり者がたまたまひとりいただけだという感じになっちゃうかもしれない(笑)。

山田:でも、今の日本には必要ですよね。

山崎:そう言われると嬉しいですね。少なくとも僕らは必要な仕事だと思ってやっています。でも、究極の目標は、コミュニティデザイナーという仕事をなくすことなんです、きっとね。コミュニティを誰かよそもんが入ってきて作らなくちゃいけないっていうこと自体がもう尋常じゃない。コミュニティはそこにあるもので、みんなが「こんにちは」ってあいさつをして、つながって、楽しい状況が自然に生まれる社会を作りたいと思っています。

対談場所 『Privatesalon Skarb』
コンセプトレストランアルカードの店内奥にある会員制プライベートサロン「Skarb」
ドラキュラの隠れ家をイメージしたコンセプトレストラン『アルカード』の店内奥にある会員制プライベートサロン。
店内のコレクションケースには、オーナーのコレクションである『ワンピース』や『クローズ』のフィギュアが何と600体以上並び、ヴィトンやバカラのレアなアイテムも鎮座。
ソファ席も完備され、アルカードのメニューは全て飲食OK。落ちついた空間で、商談や打ち合わせに最適。

ARUCARD(アルカード)
大阪市中央区西心斎橋2-4-6 花月第一ビル3F 06-6214-0040

本日の料理
● バーニャ・カウダ
● タコス
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