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特集> 社長対談 > 社長対談「阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進」
インライフの社長が聴き手となり、関西で活躍する社長と対談。社長業について、自身が身を置く業界について、同じ職種に就くふたりだからこそできる本音トークで、関西ビジネスのリアルな現状を浮き彫りに!

阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進 阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進 さん
阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進 1949年生まれ。島根県出身。
高校卒業後、加ト吉入社。
業務用食品の営業責任者として、1981年32歳で独立し、食品卸会社の阪神食品株式会社を設立。
2000年、飲食事業部初の店舗「元祖343鮨」オープン。
店舗展開を開始し、現在は「個室居酒屋6年4組」「元祖343鮨」「割烹焼肉 島根 松永牧場」「堺筋本町給油所」「個室・海鮮居酒屋さしみや」の5ブランドで直営13店舗、FA3店舗を経営。

阪神食品株式会社 公式サイト
(有)インライフ 代表取締役 山田昌也
1965年生まれ。埼玉県出身。

大学中退後、観光専門学校を卒業し旅行系編集プロダクションに入社。2年間の勤務の後、大手出版社とフリー契約。
27歳の時、広告出版会社の広告営業部に入社。8年間の勤務後の35歳、広告代理店・デザイン会社を設立。
その後、2005年1月、『(有)インライフ』を設立。

インライフWEBの運営のほか、大阪で美をテーマにしたフリーペーパー「Beauty LIFE」を発行、西心斎橋の飲食店『アルカード』などの店舗プロデュースも行う。
インライフ 代表取締役取締役 山田昌也

食品卸会社として会社を興し、その後飲食業界に参入。大ヒットブランド「個室居酒屋6年4組」を筆頭に、今や5ブランドで直営13店舗、FA3店舗を展開する。関西の飲食業界きってのアイディアマン、名物社長である檜谷氏に、ヒットを生む秘訣をお聞きした。
阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進
阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進
阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進

山田: まず創業からお聞きしたいんですが、元々は食品会社なんですよね?

檜谷: 昭和56年創業で、32年目です。その前は加ト吉で、業務用食品営業の責任者をしていました。ファミリーレストランの1チェーンが年に数十店オープンしたり、大手の弁当チェーンがどっと出店していた時代です。いずれは自分も飲食店をやりたくて脱サラしました。食品卸の会社を作りまして、20年経過して、これからは食材の強みを活かして飲食店もやろうと。12年前に、大国町に「343鮨(さしみずし)」というネタが2段重ねの寿司屋を作りましてね。これが当たったんですよ。

山田: 僕にとってインパクトがあったのが、居酒屋の「6年4組」ですね。

檜谷: 店名は、いい加減に思いつきでつけたんだろうと、皆さんおっしゃる。マスコミの方もね。でも、全部ストーリーがあって、昭和30年代でやってます。たとえば「343鮨(さしみずし)」は343と書いて、昭和34年3月のお店を作ってるんです。6年4組も昭和34年の小学校。私の友達が、ひなびた分校の校長先生の息子だったので。その小学校を再現しているんです。たまたま私が6年4組だったんで、そこは単純に6年4組やと。

山田: 僕は昭和40年生まれなんですけど、お店の雰囲気は、僕の小学校時代もあんな感じでしたね。

檜谷: そうでしょ。日本は基本的に島国なんで、あまり変わらんのですよね。そうすると、知らないけれど何となく知ってる、とか合通じるんです。昭和30年代はこれからもウケると思いますね。

山田: 幅広い層に良いですよね。今の20代、30代には新しい感覚じゃないですか。で、40代、50代には思い出みたいなかたちで入っていけるんで。

檜谷: そうですね。お客さんは20代の女性が一番多いですかね。7割女性です。女性グループ、女性に男性がついてくる。で、若い人が圧倒的に多い。60代のお客さんもちらほらおられます。だから客層的には広く来られますね。

山田: 独立から30年以上やってこられて、成功に近づいたかなと思えた、分岐点はどこですか?

檜谷: 12年前から飲食店をやってきて、1号店がすごくうまくいった。昼も夜も、お客さんよう来ました。でもね、卸と飲食店は違うんです。やってみて初めて分かったのは、魚の原価は知ってます。歩留まりはいくらで、なんぼで売ったら原価何%やいうのは分かります。でも、箸がいる、生姜がいる、おしぼりがいる。そういうのは全然(価格設定時に)計算してなかった。100円の魚なら200円で売ろうやって。だから流行ってたけど儲かってなかったんです。それで半年後くらいに昼をやめて夜だけに特化して、メニューを少し調整したんです。今も原価5割かけてるんですよ。お客さんもそれをよく分かってて、ようけ来てくれます。
それで、調子に乗ってすぐ2号店を出したんです。1号店は343鮨(さしみずし)やから34席。寿司ネタは2段重ねやから、生簀も2段。そういうふうに、全部こだわってうまくいったんで、2号店は谷町で、席数を倍の60にしたら、うまくいったんです。次の3号店はまた倍の120人にしたんです。それも針中野の、車は山ほど通るけど、人はほとんど歩いていないようなところに。
2号店では、昭和34年のアメリカを創った。3号店はお風呂屋さん。入り口は男、女にして、番台造って。湯船や洗い場も造って。寿司桶は風呂桶。30mの東海道五十三次の看板。広い天井に夜空を描いて。内装費はあるだけ使おうと、凝って凝って凝りまくりました。でもオープンしたらお客さん来ないんですよ。土日や祝日は家族連れのお客さんがワーッと来るけど、平日はサッパリ。石の上にも3年っていうでしょ、それで3年と1日やって、難波の南海通りに移転したんです。1号店が順調でしたから、何とかなりました。

阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進
阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進
阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進
山田: わずか12年で10店舗以上ですよね。

檜谷: ほんとに店舗増やしたのは、ここ5年です。5年で10軒作りました。東京は2年で4軒。それも銀座、神田、渋谷2店。良いところにばっかり出しました。

山田: 良いところですね。東京はまだ高いじゃないですか?

檜谷: もうべらぼうに高い。それで難儀してます。われわれの良いところは、これくらいはいけるやろと思ってやる、いけますねん。「6年4組」は全店ホームランを打ちました。ホームランっていうのは1年で初期投資回収です。これからも6年4組がホームランを打つことは充分できます。名古屋では打てるでしょうね。3塁打かも分からんけど、ヒットではないですね。そういう自信はあるんです。他業態の「さしみや」とか「松永牧場」とかいろいろやりながら、ホームランを待ってるわけですが、基本はヒットを打とうと思ってます。だからヒットを打つために今はガソリンスタンド居酒屋です。あれはヒット打てますね。

山田: そういうアイディアがあっても、他の方がやってもなかなか成功しないじゃないですか。そのへんがどう違うのかなと。

檜谷: 御社もそうでしょうけど、私のところは、すべての業態が日本で初めてとか、驚きで、メディアの方がたくさん来てくれます。だからこちらから仕掛けることは一切しません。おもろかったら、人がおもろいって言うてくれます。たとえばガソリンスタンドの居酒屋があったら、誰が考えてもおもしろいでしょ? 「343鮨」の時もすごかったです。多い年は20回くらいテレビに出ましたね。

山田: 「スカープ」は一切取材NGなんですよ。「アルカード」は取材受けるんですけど、今までで10あるかないかですね。でもそこまで露出効果がなくて。テレビが多いですか?

檜谷: テレビ、新聞、ラジオ、雑誌、もういろいろ。ホームページの掲載は少し省いています。

山田: やはり中身のおもしろさと、マスコミ受けするからでしょうか。

檜谷: 他にないからでしょう。ないから作るわけです。ないことをやったら、お客さんが褒めてくれるんです。1回行ってみようということで、来てもらって、ファンになればお客さんにチラシ渡して、他にこういうお店がありますよ、って紹介すれば、お客さんに納得してまた来てもらえるので、裾野が広がりますよね。

山田: 集客が落ちてきたら、違う店に切り替えるわけですね。

檜谷: そうなんですよ。飲食は5年ですね。最低3年で回収できなければやめたほうがいいです。

山田: 僕は飲食店はボテボテですね。もともと「スカープ」ありきで「アルカード」を作ったんですが、「スカープ」は広告宣伝は一切行わず、クチコミでファンを拡げています。ブログなどを介して全国に会員さんが1万人ほどいて、地方から来られるので、頻度は多くないですが。中にはもう8回目とか、よく来てくださる方もいますね。

檜谷: それはいけると思いますね。うちはガソリンスタンド居酒屋で、「秘密結社鷹の爪」の小野亮さん(FROGMAN)にオリジナルのデザインを描いてもらいました。そのTシャツをお店でも使ってます。一部のマニアの人には希少価値があるんですよ。そこに照準を合わせた宣伝も重要ですね。

山田: アイディアですね。ここはビジネスですが、半分趣味なんですよ。本業がウェブサイトや広告業なので、店舗運営のリサーチを兼ねて、5年で回収するくらいで、じっくりやっていこうと。東京から知り合いの社長やお客が来ることも多いので、東京にないようなおもしろいお店を作ろうと。

檜谷: ただね、1店ちょっと赤でも良いって思ってたらあかんのですよ。プラスのやつをマイナスにもっていきゃ何とかなるっていう発想でいると、そういうふうにしかなりませんねん。全店舗黒字にすることが経営者の仕事なんです。

阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進
阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進
阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進

檜谷: これからはね、原価50%の時代ですよ。回転寿司は45%から50%かけてます。それで回転数を上げてるわけです。だから回転寿司と言うんです。飲食店は、粗利額を確保できたら良いんですよね。みなさん粗利額がないから粗利率を取らなあかん。そうすると悪い循環になるでしょ。それを逆の発想でね。われわれはお客さんを呼びたい。来たら何とかなりますねん。

山田: お店の立地はどうですか?

檜谷: 飲食店出すときは、超1等立地を狙います。そうすると家賃は2倍しますねん。でも5倍以上人がおると想定してるんです。10年くらい前に、3等立地で家賃安くしてる人がいましたよね、そんな店ほとんど潰れましたからね。半年はもちます。でも2年先にはどこもない。ほんまにやるんやったら、駅前とか、人通りが多いところにしか出しませんね。

山田: でも、社長のアイディアだったら、店自体がおもしろいわけじゃないですか。別に好立地にしなくても、3等立地でも充分勝負できるんじゃないですか?

檜谷: いや、1年はもつんです。わざわざ2回、3回目っていうのは、3等立地は難しいですよ。やっぱり駅の近くの方が。自分がお店に行くときの理屈がそうやから。わざわざ3等立地まで・・・と、思ってしまいます。

山田: 中身がおもしろかろうが、他になかろうが、足をむけさせるのは2回、3回は・・・

檜谷: 難しいですね。針中野でどえらい店作って、経験してますからね。みんな褒めてくれましたよ。東京やったら爆発するくらいお客さん来るで、って有名な歌舞伎役者に言っていただいたり。でもお客さん来ないんでね。

山田: やっぱり立地ですかね。一見さんが飛び込んできますからね。

檜谷: 特に1階は良いですね。それと値ごろ感も大事でしょうし。私は、メニューの価格は、1割は原価を無視してやるべきやと思いますね。100アイテムあれば10アイテム。これができたらうまくいきますね。たとえばガソリンスタンド居酒屋の500円のピザ。これ原価7〜8割かかってるんです。

山田: 通常の倍以上じゃないですか。

檜谷: それで良いんです。1人で1枚食べられませんから、2人以上で食べるわけです。そうしたら高い原価が少しずつ吸収されます。お造りの舟盛りは980円ですが、これは原価もっとかかってます。われわれは魚屋(卸)なんで、寿司もお造りも鮮度が良いから、魚が光ってくるんですね。だから280円でペラペラの刺身3枚のお店より、よっぽど値打ちある。そういう原価率のものを1割作ったら、トータルでうまくいきます。粗利の率ではなく、利益の額で運営する。お客さんが来れば充分やっていけます。

阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進
阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進
阪神食品株式会社 代表取締役 檜谷 進
山田: 飲食店をやっていて、人材はひとつの課題だと思うんですけど、寿司屋さんですと、職人さんっていうのはどうやって集めるんですか?

檜谷: 職安と求人誌です。寿司屋は今までに3軒やったんで、寿司職人12人おりましたね。今10人残ってます。4人は本店の寿司屋に、あと6人は居酒屋の「6年4組」などにいます。

山田: 寿司職人の方を居酒屋に?それはみなさん納得されて?

檜谷: 40代後半から50代になると、仕事が少ないのが分かってますからね。給料はあんまり上がらんかもしれんけど、職はずっと確保するから、安心して、楽しんで仕事せい、言うてるんですよ。

山田: 「6年4組」は若いお客さんが多いので、メニューも流行りのものじゃないですか。40代50代になると感覚がついてこれない方とかいませんか?

檜谷: うちは柔軟にやれなあかん、ということで、店を行き来するんですね。こっちに6ヵ月、あっちに6ヵ月と。刺激になるでしょ。それと、基本ができていれば、何でもできるんです。「6年4組」も全店寿司出していて、職人が握ってるので、お客さんにも分かります。そういうのがすごい差別化になってると思います。

山田: 経験があって、技術が高くて、それでいて順応性が高い方って良いですよね。

檜谷: レジ苦手な人とか中にはいますよ。でも周りがサポートできるならしたれ、と。それで皆仲が良かったら一番やと。うちはアルバイトもプロやと言ってます。お金貰ってるんやからね。料理好きなのは裏いってくれ、接客好きなのは表いってくれって、って。2年くらいで充分戦力になります。 今は楽しい職場が少ないですから、そのまま社員になるのが、年に1人2人必ずおります。

山田: そのまま社員ですか。それは良いですね。育成も必要ないですし。

檜谷: おもしろくしたら良いんですよ。「6年4組」のおもしろいところはね、アルバイトは大学生や高校生なんですが、お店に出たら、お客さんから先生って言われるんです。1時間前まで生徒やったのが、制服のジャージに着替えたら、先生になるんです。喜んでやるんで、やってるほうもおもろいと思います。

山田: 健康維持のためにやってらっしゃることはあるんですか?

檜谷: ソフトボールを43年間やってます。加ト吉にいる時に、東京と名古屋と、2回転勤辞令出ましたけど、ソフトボールやるために両方断ったくらいです。ソフトボールでなみはや国体にも、地区予選勝ち上がって出たんですよ。今も60歳以上のソフトボールをやってます。それとゴルフですね。

山田: 社長の考える男前像、理想の男性像とは?

檜谷: 私は家族に支えられてきたんで、息子、嫁に尊敬してもらえなければ、男前とは言えないやろな、と思ってるんです。息子本人に聞いたことはないですが、うちの会社にいる以上、多少は尊敬してると思います。嫁さんは40年以上の付き合いで、出て行くとも言わんし大事にしてくれるんで。家族に支えられてこそ男前ちゃうかなと。そして、夫婦の仲が良いことです。商売も一緒ですよね。その点は、すごく恵まれてると思ってるんで。ほんとありがたいですね。


対談場所 『Private salon Skarb』
コンセプトレストランアルカードの店内奥にある会員制プライベートサロン「Skarb」
ドラキュラの隠れ家をイメージしたコンセプトレストラン『アルカード』の店内奥にある会員制プライベートサロン。
店内のコレクションケースには、オーナーのコレクションである『ワンピース』や『クローズ』のフィギュアが何と800体以上並び、ヴィトンやバカラのレアなアイテムも鎮座。
ソファ席も完備され、アルカードのメニューは全て飲食OK。落ちついた空間で、商談や打ち合わせに最適。

ARUCARD(アルカード)
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