Movie Column動画コラム

カメラを動かすときの“動機づけ”とは?
2025-08-01 21:41
映像制作や動画撮影を行う上で、カメラワークは非常に重要な要素です。
中でも「カメラを動かす理由=動機づけ(モチベーション)」を意識するかどうかで、映像の自然さや説得力が大きく変わります。

「とりあえずカメラを動かしてかっこよく見せたい」という意図はありがちですが、動きに意味が伴っていないと視聴者には不自然に映ってしまうこともあります。

今回は、カメラを動かすときに考えるべき“動機づけ”の基本と、自然なカメラワークのテクニックを解説します。

■そもそも“動機づけ”とは?
「カメラの動機づけ」とは、なぜ今このタイミングでカメラが動くのか、という映像上の理由・目的のことです。

例えば、以下のような場面を考えてみてください。

人物が視線を動かす

何かを見つけて動き出す

新しい情報(看板・誰かの声)が入る

何かを追いかける


このように、被写体の動きや感情の変化、ストーリーの展開に合わせてカメラが動くと、視聴者は映像に自然と入り込むことができます。
逆に、被写体がじっとしているのにカメラがやたらとパンしたりドリーインしたりしていると、映像としては「不自然」「自己主張が強すぎる」と感じられやすいのです。
 
■よくある「動機づけのない」カメラワーク
初心者がやりがちな失敗に“意味のないカメラ移動”があります。

【意味のないズームイン】特に何も起きていないのにズームで寄る

【不安定なパン】動きがブレているうえに被写体の変化がない

【無駄なカメラ回り込み】人物が動いていないのに周囲を360°回るようなショット

これらは“かっこよく見せたい”という意識でカメラを動かしているだけで、物語や感情にリンクしていないため、逆に視聴者の没入感を下げる原因になってしまいます。

■カメラを動かすべき「明確な理由」とは?
では、どんな時にカメラを動かすのが自然なのでしょうか?

カメラを動かす動機づけとして代表的なケースを見ていきましょう。

1.【視線の追従】
登場人物が目線を動かしたとき、その視線の先を追ってカメラを動かすことで「何を見ているのか?」が明確になります。

例:右を向いた主人公 → カメラも右にパンして対象物を映す

2.【感情の変化】
感情が高まったタイミングで、カメラをゆっくり寄せる(ドリーイン)ことで心理的なクローズアップを演出できます。

例:ショックを受けた瞬間、寄って内面を強調

3.【新しい情報の登場】
何か新しい対象(人物・物体・文字など)が登場する場合、それを“見せるため”の動きは自然です。

例:看板や書類のアップに寄る

4.【空間や状況の説明】
キャラクターの動きに合わせてカメラを動かしながら、場所の構造や位置関係を伝えることも有効です。

例:廊下を歩く人物を後ろから追うトラッキングショット

■自然なカメラワークの作り方
自然なカメラワークとは、被写体の動きや感情、ストーリー展開に合わせて、「なぜそのカメラが今そこにいて、どう動くのか」視聴者の没入感を高めるための重要な要素となります。

【1】被写体の動きを観察する
人物や物の動きに合わせてカメラを動かす「追従型」は、最も自然な手法の一つ。動き出す前に「なぜこの動きが必要か?」を考える習慣を持ちましょう。

【2】カメラを“視聴者の目”として捉える
カメラを単なる撮影ツールではなく、「物語を体験する観客の視点」として使うと、よりリアルな動きになります。

例えば…
観客が気になったら、自然とそちらに目を向ける(=パン)
驚いたら近づく(=ズームやドリーイン)
場所を把握したければ広く見渡す(=クレーンやワイドショット)

【3】「静」と「動」を組み合わせる
常に動き続けている映像は疲れやすく、動きの“価値”が薄れてしまいます。静止したショットとの対比によって、動きがより際立ちます。

【4】編集との連動を意識する
カメラの動きは編集と密接に関係しています。前後のカットとの繋がりやリズムを考えながら、「ここで動くと気持ちいい」というポイントを見つけましょう。

■プロもやっている「動機づけありきの演出テク」
映画やCMなどでもよく使われる“動機づけを活かした演出”をご紹介します。

【1】人物の目線移動からのパン+次のシーンへシームレスに遷移

【2】ドリーインで心理的な圧迫感を演出(例:ホラー・サスペンス)

【3】360度カメラ回転で混乱・興奮・酔いを表現(例:戦闘シーン)


これらはすべて「登場人物の状況・感情」「視聴者の体験」に根ざしてカメラを動かしており、演出と技術が見事に融合しています。

■まとめ:カメラを動かす前に“なぜ?”を考えよう
カメラを動かす際に大切なのは、「なんとなくかっこよく見せたい」ではなく、「なぜその動きが必要なのか?」を明確にすることです。

動機づけがあるカメラワークは、視聴者にとって自然で説得力のある映像となり、より深い感情移入やストーリー理解につながります。

これから映像を撮る方は、ぜひ「このカメラの動きに理由はあるか?」という問いを常に持ち続けてください。それだけで、あなたの作品はグッとレベルアップするはずです。